偽装結婚から始まる完璧御曹司の甘すぎる純愛――どうしようもないほど愛してる
 伊那は輝から花穂に目を向けて険しい表情を和らげた。

「向こうにいるから、何か有ったら呼んで」

「うん、ありがとう」

 伊那の機転に感謝した。

(ここなら輝さんもヒステリックに暴れたりしないでしょう)

 もし騒ぎを起こしたら輝の立場だって厳しいものになるのだ。今日は悪酔いした様子はないから、さすがに理性があるはずだ。

「……くそ」

 伊那が居なくなると輝は悪態をつき、どさっと乱暴に椅子に座った。それから花穂に怒りに染まった目を向ける。

「余計な真似しやがって」

 まだぶつぶつ呟く輝に、花穂は不快感を覚えながら声をかける。

「それで話ってなんですか?」

 輝はぎろりと花穂を睨んだ。

「お前、うちの会社を潰せとでも旦那に言ったのか?」

 想定外すぎる言葉に花穂は眉を顰めた。

「なんの話ですか?」

「とぼけるな。お前の旦那と会ってからうちとの取引を辞める会社が続出してるんだよ。

どう考えても六条グループの圧力がかかってるだろうが!」

「私は何も言ってないし、夫がそんなことをするとは思えないけど」

 六条グループはかなりの影響力を持つ企業だから、その気になったら可能かもしれないが、響一が個人的な感情で会社を巻き込むような仕返しをするとは思えない。

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