旧財閥家御曹司の愛妻渇望。 〜ご令嬢は、御曹司に甘く口説かれる。〜
彼から見つからないようにするためになるべく遠い場所で選んだのがこの島だった。
「結鈴ちゃん、もう休憩していいよ。人いなくなってきたから」
「ありがとうございます、じゃあ休憩いただきます」
私は食堂から出て浜辺でお弁当を広げる。
この島に来た時、働く場所を探したのだけどなくて彷徨っていた時に住み込みで雇ってくれたのがここの食堂の榊原ご夫婦だ。
店主である旦那様の智さんに奥さんの吏美子さん。とても優しい人たちに出会えて私は幸運だと思う……でも、ふと思い出してしまう。彼と自分の子のことを、考えてしまう。
彼は好きな人と一緒になったんだろうか、私がいなくなって喜んだかな。
子どもは元気だろうか、新しい奥様は可愛がってくださっているかな。元気だといいなぁ……なんて考えたらキリがないくらい想いが溢れた。