桜ふたたび 後編
❀ ❀ ❀
その寺は、海岸から切り立った山の、中腹にあった。
山道の入り口でタクシーを降り、古木の鬱蒼とした参道を登ってゆく。
参道というよりうねった岨道で、あたりにはゴツゴツと尖った白い奇岩が、地面から突き出している。まるで岩の波から樹木が生えているような斜面に、間伐材を埋め込んだような階段が続いていた。
ジェイは、何度も澪の様子を振り返り見た。
そのたび彼女は、「まだまだ大丈夫」と、迷う背中を押すように、汗まみれの顔で笑った。
ようやくたどり着いた山門をくぐると、正面に小さな本堂があった。
鄙びた寺で、本堂の傍には古びた鐘楼堂と大師堂がある。
澪は、寺務所に声を掛け、奥から出てきた作務衣の若い僧侶と、ずいぶん長い立ち話をしていた。
ようやく戻ってきた両手には、いくつかの荷物が提げられていた。
「あの大師堂の奥を、登って行くんですって」
澪は、何も聞かない。
そして、何も言わない。
大師堂の奥の林、足元に笹が迫る細い土の階段を登る。
地面はでこぼこと波打ち、ところどころ崩れていて、背後を歩く澪が何度もまろびかけた。
登りきったところで、急に視界が開けた。
墓所だ。
海に向かって開けた平地に、いくつもの墓石が整然と並んでいる。
山茶花の生垣で一基ごとに仕切られ、大きなものから小さなものまで、古いものから新しいものまで、その先に広がる銀鱗のような太平洋へ向けられて立っている。
海よりの風が吹き抜けて、周囲の枯れた草が時雨のように鳴いた。
澪は迷わず「こっちです」と歩き出す。
崖近くまで進むと、墓石に刻まれた文字を確認して、振り返り、頷いた。
その寺は、海岸から切り立った山の、中腹にあった。
山道の入り口でタクシーを降り、古木の鬱蒼とした参道を登ってゆく。
参道というよりうねった岨道で、あたりにはゴツゴツと尖った白い奇岩が、地面から突き出している。まるで岩の波から樹木が生えているような斜面に、間伐材を埋め込んだような階段が続いていた。
ジェイは、何度も澪の様子を振り返り見た。
そのたび彼女は、「まだまだ大丈夫」と、迷う背中を押すように、汗まみれの顔で笑った。
ようやくたどり着いた山門をくぐると、正面に小さな本堂があった。
鄙びた寺で、本堂の傍には古びた鐘楼堂と大師堂がある。
澪は、寺務所に声を掛け、奥から出てきた作務衣の若い僧侶と、ずいぶん長い立ち話をしていた。
ようやく戻ってきた両手には、いくつかの荷物が提げられていた。
「あの大師堂の奥を、登って行くんですって」
澪は、何も聞かない。
そして、何も言わない。
大師堂の奥の林、足元に笹が迫る細い土の階段を登る。
地面はでこぼこと波打ち、ところどころ崩れていて、背後を歩く澪が何度もまろびかけた。
登りきったところで、急に視界が開けた。
墓所だ。
海に向かって開けた平地に、いくつもの墓石が整然と並んでいる。
山茶花の生垣で一基ごとに仕切られ、大きなものから小さなものまで、古いものから新しいものまで、その先に広がる銀鱗のような太平洋へ向けられて立っている。
海よりの風が吹き抜けて、周囲の枯れた草が時雨のように鳴いた。
澪は迷わず「こっちです」と歩き出す。
崖近くまで進むと、墓石に刻まれた文字を確認して、振り返り、頷いた。