桜ふたたび 後編

[すごいなぁ]

レオは惚れ惚れと言って、空を見上げた。

[ラップランドって、オーロラが出るところでしょう?]

[うん!]

[観たことあるの?]

[もちろんだよ! お空にぐわーんって!]

メルは塀から離れて、両手を広げ得意気に説明する。
カールが空を見上げて、夢見るような顔をする。

[うらやましいなぁ。おじさんも観たいけど、ラップランドはリールより寒いんでしょう? 寒いのは苦手だから、来年の夏にしようかな]

[オーロラは、夏は見えないって、アーシャが言ってた]

[アーシャ? お友だち?]

[ラップランドのぼくのおばちゃん]

メルは慌てて両手で口を塞いだ。

[今の、ママンには内緒にして。お友だちにも喋っちゃいけないって言われてたんだった……]

レオは目を細めて、優しく笑いかけた。

[大丈夫だよ、誰にも言わない]

[ほんと?]

[うん、約束する。──そうか、オーロラはいつでも観られるわけじゃないんだね。メルは、ヴァカンス中に行ったの?]

[ううん。この間、学校をお休みして行ったんだ]

メルは靴の先で地面を軽く蹴った。

[ぼくは秋休みに行きたかったのにさ。学校があるからって、すぐに帰ってきちゃったんだ]

レオは微かに目を見開いて、すぐに笑顔に戻した。
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