まじないの召喚師3



………のを、常磐と柚珠の背中越しに見ていた。


いくら響の作った幻覚とはいえ、自分の姿をしたものがアイアンメイデンされるのを見るのは痛い。

もちろん、本当に痛いわけではなく、大怪我を見て、痛そうと顔を顰めるアレだ。

幻覚の私が潰されると同時に、重力は解いている。

本物の私達が無傷で後ろにいると気付かない柚珠は、立ち上がって高笑いした。



「あははっ! 降参しないからやめなかったよ。全身穴だらけの大怪我だろうけど、死んでないはずだから安心してねっ」



「よくやったな。残るは、俺とお前の勝負だけだ」



拳を打ち鳴らす常磐が柚珠を見下ろす。



「えっ、待ってよ、今大技使ったばかりだから、霊力が……」



「残念だが、これも勝負だからな。管理できていなかった自身を恨めよ」



常磐の拳骨が柚珠を直撃。

床に顔面を埋めた柚珠は意識を失った。



「ハッ、これでリーダーは俺だ……」



哀れんだような、残念そうな顔をして、常磐が呟いた瞬間。



「まだ早ぇよ」



右側から声と同時に斬りかかった先輩だったが、間に入ったイワナガヒメの岩盾に止められた。



「……柚珠の攻撃を避けていたか」



「あんなのに当たるかよ」



目にも止まらぬ速さで斬りかかる先輩のことごとくを岩盾が受け止める。

愉快そうな常磐はイワナガヒメに護られ、余裕をもって腕を組む。



「惜しいな。桜陰、お前俺の下につけ」



「お断りだ」



「なぜだ。なぜわざわざ弱い奴の下につく?」



「あいつは、弱くねぇよ」



「どこを見てそう言える。お前でも避けられた攻撃で重傷を負った奴らだぞ!」



「お前こそ、どこ見てんだよ」



「どこって………!?」



常磐は荊のあった場所を振り返る。

柚珠の意識をなくしたと同時に消えた荊のあった場所に、人影は無かった。



「いつの間に!? どこ、に……いっ…………」



ふいに、意識が遠くなり、常磐はその場に倒れた。



「………霧状にした睡眠薬を吸ったんだ。気づかなかったでしょ」



「よくやった、響」



響が、私達の姿を隠していた幻術を解く。

先輩が私と響の所に来た。

主人が倒れ、戦う理由もなくなったイワナガヒメの追撃はない。



「雷地、柚珠、常磐、戦闘不能により、俺達の勝ちでいいな?」



私達3人を見て、イワナガヒメはひとつ頷く。



「異論はない」



「ご主人様っ!」



「やった!」



子供達が手を取り合い、歓声をあげた。






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