まじないの召喚師3
「なんでもありの一回勝負。意識を失ったら負け、降参は認める。イワナガヒメが投げる石が、床についたら攻撃開始だ」
西部劇のタイマン勝負のようなものか。
コインを投げ、それが地面に落ちると同時に撃つ。
そのコインの役割を石が果たすというわけだ。
「わかった」
常磐の提案する試合開始の合図に、先輩は頷く。
雷地と柚珠の表情が一瞬、苦虫を噛み潰したようになり、すぐに戻った。
子供達は隅っこで先輩を応援していた。
常磐の隣に現れたイワナガヒメが一礼する。
「では」
彼女の手のひらに、拳大の石が現れ、下から上に投げる。
先輩が刀を構え、響はヘッドホンを装着する。
私も、剣を顕現させた。
天井に向かった石は、弧を描くように私たちの方に落ちてきて。
「………へぇ、そう来るんだ」
響の呟きに、雷地と柚珠の一瞬の表情の理由がわかった。
彼らは既に、部屋決めで常磐と戦っている。
その時に受けたのだろう。
試合開始の合図と、攻撃が同時に来る。
イワナガヒメが中立の立場とは一言も言っていない。
先輩が了承した以上、ルール的にはなんら問題はないのだ。
向こうがその気なら、こちらもそれに順応するまで。
先輩は雷地に向けて走り出す。
「なっ……!?」
床についたら攻撃開始と言った。
つまり、移動の制限はされていない。
石の一撃と、先輩の一閃が同時であっても、なんら問題はないのだ。
このままの軌道だと、石は私の足先ギリギリに着弾するだろう。
その衝撃で吹き飛ばす算段。
先輩のように速くない私と響は無傷での回避は難しい。
「任せて」
ツクヨミノミコトが出てきて、剣を振り下ろせば、石が真下に落ちた。
同時に先輩の一閃が雷地を壁まで吹き飛ばす。
「まずは一人」
雷地は壁にめり込み、気を失っていた。
「重力で石の落下位置をずらした。それにより、開始の合図も早まる。ルール違反じゃないよ」
「………流石、ツクヨミノミコトです」
「ルール違反でしょ! 重力なんて、攻撃だよ!」
「向かってくる攻撃を防いだんだ。防御だよ」
「屁理屈じゃん!」
きゃんきゃん鳴く柚珠を重力で床に沈める。
「なんでもありの一回勝負。君相手に使えば、攻撃にもなるかもね」
「ぐ、ぐぅ………」
「どんどん強くするよ」
「やめっ……」
「降参するならやめるけど?」
「誰が……っ!」
苦しそうに顔を歪める柚珠の隣。
先輩が雷地を吹っ飛ばした勢いのまま一回転し、常磐に斬りかかる。
それを常磐は腕で受け、火花を散らす。
「俺の肉体は鋼の如く硬い」
「チッ。鉄壁の浄土寺は伊達じゃないな」
先輩は常磐に蹴りを入れた勢いで、私達の側に戻ってくる。
「よく避けたな」
先程まで先輩のいた場所には、尖った岩が突き出ていた。
「当たりたくないんでね」
「今度はこっちの番だ」
瞬間、私達3人を囲むように荊が生えた。
「ふんっ、油断したね。この程度の重さ、なんてことないもん」
荊はそのままドーム状に私達を閉じ込め、空気が抜けたように収縮。
そして潰れた。