まじないの召喚師3



そして、咳払いを一つして、大きな銀の満月を背後に、神様らしい声色で厳かに話し出した。



「月海、私に願いなさい。家を元に戻すようにと」



願って戻れば警察はいらない。

と、通常なら思うべきところだが、以前、ツクヨミノミコトには願いを叶えてもらった実績がある。



「わかりましたよ………」



私はしぶしぶ、神社で祈るように、柏手を打ち、手を合わせた。



「私の家を元に戻してください」



「願いが足りないねぇ」



殴ってやろうか。


合わせた手が拳に変わる。


調子に乗りやがって。

本当は戻せないのに、戻せると嘘を言ってこっちをバカにしているんじゃなかろうか。



「待った待った! その拳を解こうか!」



不敬とか知ったことか。

一発殴らせろ。



「………これは、術者全てに言えることなのだが」



真上に振りかぶったところで、スサノオノミコトがツクヨミノミコトを庇うのか庇わないのかの位置に浮かぶ。



「術を行使するためには、想像力が重要となる。具体的であるほど威力や効果があがる」



そうなの?


と、疑いの目を向けると、ツクヨミノミコトは赤べこのように頷いた。

幻を作り出す術者の響も頷いた。



「………練った霊力に命令を与え、別の形として現す。僕なら、霊力を水に変えて、打ち出す、とか」



響の指先から発射された水鉄砲は、ストーンヘンジを削った。



「熟練度も大事だよぉ」



雷地が指を振ると、虚空に現れた見慣れた剣はストーンヘンジを斬ったが、アイアンメイデンはストーンヘンジに棘を折られた。



「いつもの剣ならこの通り。サイコロ状に切れたけど、新技は傷ひとつつけられなかった」



「ハッハッハッ! 流石はイワナガヒメの岩!」



「見てたよねぇ。剣なら斬れるんだよぉ」



怒った雷地は複数の剣を乱舞させ、ストーンヘンジを全てレンガくらいの大きさに変えた。


術の使えない先輩に教わってきたから、想像力なんて聞いてない。


私は初めから、先生選びを間違っていたのか。


なんて思っていたら、先輩が後出しジャンケンをしてきた。



「身体強化にも、想像力は必要だぜ」



「は?」



「身体の構造を知り、どこを強化するのか、意識して使うんだ。早く走るのに、腕を強化しても仕方ないだろう」



「想像したらなんでもできるわけじゃないけどねー。ボクなんて、どう頑張っても響みたいな幻覚は作れないしー。代わりに豚どもを従順な下僕にできるけどー」



「柚珠の魅了はタチが悪い」



全てにおいて常識らしい。

もっと早く知りたかったなぁ………。



ぇ?

実は言ってた?

聞いてないよー………。



記憶を掘り起こすも、何も出てこない。

いや、でも、動かしたい方向に動かすようなイメージはしてたけど。

足りなかったのか。


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