まじないの召喚師3



ドゴオオオオン!



「っ!」



地面が揺れ、庭から爆発音がした。



「あははははっ、新年から派手な花火を打ち上げるじゃないか」



「…………笑ってないで、消火しろ」



バケツをひっくり返したような大雨と、全てを巻き上げる強風が同時に起こる。

ねえ、おふたりさん、私の家に何してくれてんの?



「……………すぅ………………はぁぁぁぁぁー………」



深呼吸をして、思考を落ち着かせる。

意識して霊力で身体を覆う。

この程度の身体強化で嵐に飛び込んだところで吹っ飛ばされて終わりだろうけど、その前に気づいてもらえたら手加減してくれるはず。

それすなわち、家を破壊しない、させない。


一歩、踏み出そうとした時、再び地が揺れた。



「ぶふぉっ!」



今度は完全にバランスを崩して、こけた。

強化してたし受け身もとった。

目立つ傷はない。

身を起こそうと、手をついたところで、戦場から聞き慣れた声が聞こえた。



「ワッハッハ! 祭りなら俺たちにもかませろよ!」



「拳で庭を割るってさぁ、信っじらんない」



「…………筋肉バカ」



「常磐にしかできない芸当だよねぇ、ホント」



「雑魚どもにはとっととお帰り願おうか」



浄土寺常磐、桃木野柚珠、神水流響、金光院雷地、火宮桜陰。

同盟者の凱旋だ。



「クソッ! 挟み撃ちとは卑怯な!」



「徒党を組むのとどっちが卑怯だよ!」



「ひいぃっ!」



侵入者の叫びを両断する桜陰の低めの声に、腰が抜けた。


怒っていらっしゃる。


次いで、鈍い打撃音が数度鳴り、静かになった。

震える脚を動かして、壁に手をつき庭に回る。

おそるおそる壁から顔だけを覗かせるとそこには、でこぼこに荒れた庭に、同盟者が立ち、そこに人形がふわふわと近づくところだった。

警戒のとけた雰囲気に、襲撃者の撃退は終わったのだと察する。



「やあやあおかえり、待っていたよ」



歓迎の意を示すように両腕を広げた人形は、次の瞬間、弾けるように後退した。

ほぼ同時に、ツクヨミノミコトが浮いていた所に銀の線が走る。



「チッ、外した」



「奇襲のチャンス逃してやんのー」



「せっかく譲ってやったというのに!」



「桜陰の抜刀術も、口ほどにもないねっ」



「…………へたくそ」



「あァん? てめえら俺様に負けたろ」



「はぁ? それは桜陰がずるい手使ったせいでしょ! あんなの闇討ちじゃん!」



「ずるいのは柚珠だよねぇ。スーパーで買った林檎をわざわざ毒林檎にして、俺たちに食わせようとしたよねぇ」



「結局食べてないんだからノーカンでしょ!」



「柚珠にもらった林檎のことか? 俺はなんともなかったぞ」



「………筋肉達磨の内臓がどうなってるのか、診てみたい。クフフッ」



「雷地も人のこと言えねえだろ。剣山生やしての着地狩りはやめろ」



「踏まなかったじゃんー? アクロバティックな人外の動きをされて気持ち悪かったなぁ」



「てめえのせいだろ!」



「地に着く直前の足を振り上げて空中3回捻りからの鞘を振り下ろしてさらに7回宙返りして着地。と見せかけて新たに生えた剣の腹を蹴り砕いた高速回転で追い剣山回避。あれは気持ち悪かった」



「あの時の桜陰のすばしっこさは人間やめてたな!」



「あぁン? 喧嘩売られてんなら買うぜ」



「怒るなよ、羽虫」



「飛べねえよ」



「そこなの?」



「………みんなまとめて実験したい、クフフ」



やいのやいの。


褒めているのか貶しているのかわからないやりとりが続く。

しばらく後、区切りがついたところで、ツクヨミノミコトが口を挟んだ。



「気は済んだかい? 終わったなら…………」



「済むかよこの野郎!」



「おっと、また不意打ちかい?」



雷地の飛ばす小ぶりな剣も、小さな人差し指ひとつで光り、砂のように風に溶けた。


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