再縁恋~冷徹御曹司の執愛~
「……やっと会えたのに、なんで争わなければいけないんだ」


疲れたように片手で目を覆う姿に、心が軋む。

私たちはもしかしたらまったく違う方向を向いているのかもしれない。

こんな状態で一緒に暮らしてもうまくやっていけるはずがない。

住む世界の違いを、今さらながら突きつけられた気がした。


「今の私たちが一緒にいられると思えない」


動揺を押し隠し、できるだけ冷静に声を絞り出すと、私を抱きしめる腕に力がこもる。


「また逃げるつもりか? 許さない。入籍と同居は絶対に譲らない」


「違う、話を聞いて。もう少しきちんと話し合いたいだけなの」


せめてお互いの気持ちを通わせたい。


「これ以上なにを話す? 息子をあきらめるつもりはない。あの子は嵯峨の後継者だ」


強い物言いに愕然とする。

足元にぽっかり暗い穴が開いて吸い込まれそうな気がした。


「でも……っ」


反論しようとした唇を強引に塞がれる。

荒々しい、気持ちをぶつけるようなキスに心が悲しく引き裂かれるような気がした。

何度も角度を変え、繰り返される口づけにうまく呼吸ができなくなる。

唇が離れたわずかな瞬間に必死に息を吸うと、首筋や鎖骨を甘噛みされる。

私の官能を引き出すようなキスに背中が震える。
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