素直に好きと言えたら*遠回りな恋*
二回目のジェットコースターを乗り終えて、絶叫系が好きな私もさすがに二連続だと足元が少しふらついた。
「羽瀬さん、大丈夫? 二連続させてごめんな」
守谷くんがそう謝りながらジェットコースターから降りようとした私の手を取ってくれて、降りるのを助けてくれる。
「あっ、ありがとう。でももう大丈夫だから。手、離して」
ジェットコースターを降りたのに掴んだ手を離してくれない守谷くん。
このまま歩いて行くと手を繋いでいる所を斗真に見られてしまう。
「俺たちデートしてるんだし、別に良いんじゃね? それとも繋いだ手を見られたくないやつでもいんの?」
「そっ、そう言うことじゃなくて。私たち付き合ってるわけじゃないんだし、こんなのおかしいよ」
「へぇ、おかしいんだ。 ここに来る時、俺のこと後ろから思い切りハグしてたのどこの誰だっけな。結構な力でハグされてたんだけどな」
はい? ここに来る時にハグしてたって。
それはバイクに乗ったからでしょ。
「あれは怖かったし、振り落とされないように掴まってただけだもん。変な言い方しないで!」
私は守谷くんに変な言い方をされたから恥ずかしくて顔が真っ赤になった。
「あははっ、羽瀬さんかわいいな。真っ赤だし。その顔、絶対に鈴鹿には見せたくねー」
斗真に見せたくないって、意味が分からないよ。
どうにか繋がれた手を離してもらい斗真と麻里のところへ行くと、麻里が私に飲み物を差し出してくれた。
「陽菜、アイスティーで良かった?」
さすが麻里。
私の好きな飲み物を買っておいてくれた。
「わぁ、麻里ありがとう。叫びすぎて喉カラカラだったの」
麻里にそうお礼を言うと、
「それ私じゃないよ。斗真が選んで買ったの」
え? 斗真が買ってくれたの?
アイスティーは斗真が選んでくれたんだ。
「斗真、嬉しい。ありがとう」
斗真にお礼を言うと、斗真は少し照れたように私から目線を外した。
「なあ、鈴鹿。俺のは?」
私の隣にいた守谷くんが低い声で斗真に向かって言う。
「はあ? 守谷は自分で買って来いよ。俺はお前の好みなんて知らねぇし」
守谷くんに対して反発するように斗真が返事をしたんだけど。
言われた守谷くんは何故かニヤニヤしていて。
「へぇ、鈴鹿は羽瀬さんの好みなら知ってんだ。ふーん」
斗真が私のことを良く見ているみたいに守谷くんが言うから、私は慌ててしまった。
「これは、ちっ違うよね斗真。私がいつもアイスティーばっか飲んでるの知ってるから、だよね斗真」
守谷くんが変な風に言うから麻里に嫌な思いをさせてしまうよ。
そんなハラハラしている私の気持ちをよそに守谷くんは涼しい顔で、
「俺、なんか買ってくるわ。その間に次に乗るもの決めといてね、羽瀬さん」
そう言って守谷くんは売店に行ってしまった。
「ねえ陽菜。もうずっとずっと言い続けてるけど私と斗真はね・・・」
麻里が私に言いかけた言葉を途中で止めて斗真を睨んでいる。
「分かってるよ、麻里。その先は俺が言う」
斗真は私に何を言うの?
告白もしていないのに失恋しちゃうのかな、私。