ポンコツ魔女は王子様に呪い(魔法)をかける
 王子が目立つことをしたせいか、それともそんな王子を諌めつつ挨拶をしようと陛下が前に出たからか。

“きっと、どっちも”

 この一見緩そうな雰囲気の茶番のお陰で私をじろじろと見ていた視線は全てメルヴィへ、そしてそのまま陛下へと流れるように移動した。

 あえて呆れられるような行動で私よりも自分へ注目がいくようにしたということなのだろう。

「……私、何も肩書きは持ってないけど。でもメルヴィを下げたい訳じゃないわ」
「ふふ、そっか」
「支持率失っても知らないからね」
「対抗馬はいないから問題ないよ」
「大有りよ!」

 やはりどこか楽しそうに笑ったメルヴィは、もうそれ以上は口を開かなかった。


「急な招待だったにも関わらず、皆が足を運んでくれたことに感謝しよう」

 さっき小さく怒っていただなんて思えないほど穏やかな話し出しは、穏やかなのにしっかり威厳もあり会場中が研ぎ澄まされるようで。

“確か、陛下の挨拶が終わったらメルヴィが何かを発表するのよね”

 何を言い出すのかと考えるだけで額からぶわっと汗が出そうになる。
 何かの発表をした後は自由時間だと聞いている、が。
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