ポンコツ魔女は王子様に呪い(魔法)をかける
「そんな顔されましても、流石にただの魔女の私が呼び捨てとかは……」
「俺だってただの王太子だよ」
「“ただの”の定義!」

 私の返答をクックと笑い流したメルヴィ殿下は、けれども譲らないという意思を感じさせる眼差しで私を見つめて更に一歩近付いた。

「……メルヴィ。これでいいですか?」 
「ふふ、本当はメルって呼んで欲しかったんだけど……今はそれで妥協しよう」

“いきなり愛称とか呼べるわけないじゃない”

 本来なら名前すら呼べない相手。
 許されているのは、私の魔法が効いているから。


 それでも、やけくそ気味に呼んだ名前は効果があったらしくジリジリと距離を詰めてきていた殿下はにこりと笑って離れてくれた。

 ――手は離してくれなかったが。

“なによ、もう……”

 どうせ今だけのくせに。
 それは相手にも言えるし自分にも言える。

 私だって顔だけで選んだのだから。

「って、それにしては発動するのおかしくない?」

 魔女の魔法は願いの力。
 本心から願わなくては発動しないのに、ここまでがっつり発動したってことは――……

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