ポンコツ魔女は王子様に呪い(魔法)をかける
 そして前半ページに記載されていたのは利尿作用や下痢、痔に効くような効果を持った薬草たちで。

 
「だから、薬草畑は胃腸関係のものばかりだったのかしら」

 メルヴィはこのページが何度も開かれていたから、このページの薬草に興味を持ったのだと勘違いしたのだろう。


「本当にバカ。私、今日何回メルヴィに対してバカって思ったの?」

 でもそうとしか思えない。
 だってバカなんだもの。

「薬草に興味が持てなくて、最初のページから先に進めなかっただけなのに」


 まるで失った記憶が降り積もる雪のように、私の心に落ちては溶ける。
 じわじわと溶け広がった記憶たちは、私が忘れたかった過去なのだろう。


 少しずつ積もり始めるその記憶を辿って取り戻すのは、私が十歳以前の記憶たちだ。



 ――母は魔女だった。父は最初からいなかった。
 そういった行為に興味を持った母がどこかで子種を貰い私を身ごもったのかもしれないし、死別か離別……いや、もしかしたら相手も案外魔法使いで旅に出たのかもしれない。
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