ポンコツ魔女は王子様に呪い(魔法)をかける
 彼が青ざめたのは迷子になったからじゃない。
 彼が泣いていることを見られたからだったのだろう。


 だって彼は、この国唯一の王族の血を引く子供だったから。
 泣くなんて許される立場ではなかったのだから。
 

 この国の両陛下はとても仲が良かった。
 そんなふたりの愛が結び、メルヴィが誕生した。

 第一子の誕生、それも男児だ。
 それは国の未来が安定した瞬間でもあった。

 だが産後の肥立ちが悪く、王妃様が亡くなられたことをきっかけに全てが一変した。
 それはこの国の事情には詳しくない、というか全く興味なく森でずっと過ごしていた師匠でさえその日の話は知っていて、私に話してくれたことがあったほど。

 
“今思えば、それがメルヴィの話だったから師匠は私に話してくれたのかもしれないわね”
 
 
 お祝いムードだった国は一気に静まり暗い雰囲気に包まれた。
 もちろん、これからのことを考えれば当たり前なのだが、何度も陛下には再婚の話が上がったという。

 けれど深く王妃を愛していた陛下は一度も首を縦には振らなかった。

 
『跡継ぎならばもういる。だから問題ない』

 
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