ポンコツ魔女は王子様に呪い(魔法)をかける

23.幸か不幸か、興味の向かうその先は

 幸か不幸か、幼い私は王太子の顔を知らなかった。
 ……まぁ、二十歳になった私も王太子の顔を知らなかったのだから当然だろう。


『悲しいことがあったの?』
『痛いところがあるの?』

 どんな質問にも彼は答えず俯くばかり。
 必死に耳を傾けてみるが、聞こえるのは鼻を啜る音だけで。


“だから私は、自分の話をしたんだわ”

 それは寂しいという本音を隠した小さな愚痴だった。
 深い意味はない、何も話してくれないから自分の話をしただけ。

 子供だって大変よね、という大人の真似事。


『お母さんがすぐに行っちゃうの。ご飯を食べる時と夜ご飯の後と、寝る前しか一緒にいてくれないの』

 どこか同情を誘うような、そんな言葉。
 それは寂しいね、なんて、言って貰うための言葉。

 けれど――


『帰ってきてくれるだけでいいだろ、僕にはもういないんだから……!』


 ――母を喪ったばかりの幼い少年の心を傷付けるには十分だった。


 再びぼろっと涙を溢れさせた彼を唖然として見上げる。
< 175 / 231 >

この作品をシェア

pagetop