ポンコツ魔女は王子様に呪い(魔法)をかける
「それでも、俺は人の上に立つための教育をされていて」
「私はメルヴィの下に座る教育は受けてないわ。あの頃の私たちは、ただの子供同士よ」

 少し強い口調で断言すると、再び彼の口が閉ざされてしまう。
 そんな閉ざした彼に代わり、私が口を開いた。

 
「薬草には興味がなかったの。だから最初のページまでしか開けなかった」

 話しながら抱えていた薬草の本をパラリと捲ってみるが、今の私もやはり興味はひかれず最後のページまで見れそうにない。
 ただ滑るだけの視線を無理やり切るようにパタンと本を閉じると、その音が聞こえたのか嘲笑するようにメルヴィが小さく笑いを漏らした。


「何もかも、無駄だったんだな」
「だって私は魔女だもの。興味があるものにしか反応しないわ」
「そうだな」

 語尾が消え入りそうになるほど小さく呟く彼は、私への返事ではなく自分へ言い聞かせているようで。

「でも、無駄じゃないわ。興味がないことを思い出したの。私は薬草に興味を持っている魔女ではないけれど、そもそもそんな魔女いなかったのだとそう理解したわ」

 この本が、そしてこの本のページが、どの魔女も来なかったあの薬草畑が。
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