ポンコツ魔女は王子様に呪い(魔法)をかける
「……何がお姉さまとの約束だ」

 まるで台風のような彼女にため息を吐いた俺は視線を手元の鉱石へと向ける。
 確かにリリアナへ興味を惹かれたのは事実だが、当然それは恋なんていう代物ではなく、どちらかといえば観察対象としてに近い。

「俺の興味の一番は鉱石だ」

 苛々とした気持ちを振り払うように仕事を再開させた俺は、何故自分が今苛立ったのかはわからなかった。



「ねぇ、その後リリアナちゃんとはどんな生活をしているの?」

 にこにこと話しかけてくるのはレベッカだ。

「知らん」
「知らんってあんたね……、あ、さては照れてるな?」

 にこにことした顔を今度はニマッと少し意地悪に変えた彼女をジロリと見る。

「わ、こわぁい」
「そんな言い方をしても媚びれてないぞ」
「可愛くなくて悪かったわね」
「可愛くないとは言ってない。媚びれてないといったんだ」
「どう違うのよ」

 きょとんとしたレベッカを見た俺は、どう違うかを考えて。

「レベッカの発言により不快な気持ちになった」
「えっ」

 端的に今の感情を伝えると、彼女の顔が急に狼狽えた表情に変わる。
 その顔を見ると、不快に感じた気持ちが溶けるように感じて少し楽しくなった。

「媚びるとは相手を煽てて取り入る行為だ。俺から何かしら解答を得たいならせいぜい媚びるのがいい」
「いや、そもそもなんで私がテオに媚びなきゃいけないのよ。私の方が先輩なんだから敬いなさい」
「レベッカを敬うという感情とそのメリットが理解できないな」
「可愛くない!!」

 フンッと鼻を鳴らしたレベッカは、それでも発掘した鉱石に傷をつけないように丁寧に俺の目の前に並べその場を後にした。
 いつもよりドスドスという荒い足音。

“怒りを表現しているつもりなのか?”

「ふむ、可愛いという単語は自分に向けるべきだな、レベッカは」

 精一杯の『怒っています』アピールにくすりと笑みが溢れたのだった。
 
 
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