【コンテスト作品】初めての恋の相手はファーストキスを奪った御曹司でした。
「はい」
「そのニット帽、かわいいな」
「あ、これ……ですか? ありがとうございます」
久遠さんは「似合ってるよ、すごく」と褒めてくれる。
「……嬉しいです」
久遠さんのことが、私は大好きだ。
「久遠さんも、そのマフラー、似合ってます」
「ありがとう」
誰かにこんなに褒められることって本当になかった私は、そのことを新鮮に感じる。
「さ、クリスマスディナーにでもしようか」
「はい」
二人で並んで歩き出すと、久遠さんは私の手をぎゅっと握りしめ、離れないようにしっかり繋いでくれる。
「久遠さんの手……あったかいです」
「奏音の手もあったかい。それに小さくて、かわいい」
「かわいい、ですか?」
かわいいなんて言われたことないから、ちょっとびっくりした。
「小さくてかわいいよ。握るとさ、小さいのがよく分かる」
「……そんなこと言われたの、初めてです」
だからか分からないけど、すごく嬉しい。
「また初めて、奪っちゃったみたいだな」
「……はい。奪われました」
久遠さんとの初めてを色々経験していく中で、初めてが増えていくことは嬉しい。
ドキドキもするし、恥ずかしいし、緊張もするけど。でもやっぱり、嬉しいが勝つ。