偽物の天才魔女は優しくて意地悪な本物の天才魔法使いに翻弄される

天才魔法使いが授業で作っていたもの



今日は魔法学が最後の授業だ。それもようやく終わり、オリビアは後片付けをしていた。あとはノートをカバンにしまえば帰れるのだが、見つからない。

「あれ?どこに置いちゃったかしら」

さっさと帰りたいのに、こういう時に限って物を失くす。1人、また1人と生徒が教室を出ていく。オリビアが最後の一人になった時、後ろから声をかけられた。

「オリビア」

振り向くと、ハヤトが立っていた。

「……はぁ」

昨日の今日で話したくなかった。オリビアは冷淡に返事をした。ハヤトの顔を見ないように、ノートを探す。

「これ、君のでしょ?机の上に置いてあったよ」

ハヤトがオリビアのノートを持っている。

「あっ、…………どうも。机?どこの机にあったの?」

「僕の机」

それはおかしかった。オリビアは今日、ハヤトの近くに行っていない。

「…盗ったわね」

「ごめん、2人きりになりたくて」

ハヤトは微笑んだまま、平然と言った。

「ちょうど良かったわ。心は決まりました。昨日の返事だけど、お断りします。ごめんなさい」

オリビアははっきりと言って、頭を下げた。が、ハヤトは聞いているのか聞いていないのか、全く表情を変えずに何かを机に置いた。

「これ、見てくれる?」

オリビアは頭を上げた。

「…え?え、これ、さっきの授業で作ってた魔法薬?」

出来るだけ誠実に断ったつもりだったが、見事なまでに流されて戸惑った。言われるがまま、魔法薬を手に取る。クラスの誰もがその出来栄えに驚いていた彼の魔法薬のひとつだ。緑のような青のような、綺麗な海の色の薬品が小瓶の中で揺れる。

「これ、何の薬?色が綺麗ね。こんなのまで作れるなんてね。で、それで?凄いでしょって話?」

またいつもの挑発かと思ったが、ハヤトは言った。

「今日、薬品棚の管理方法の授業だったろ。で、その後に魔法薬精製」

「ええ」

「薬品棚って、生徒が扱う物だから、そこまで危険な物は入ってないはずだよね」

「確かそうだったわね。先生も言ってたわ」

──?何の話がしたいのだろう。

「僕の薬品棚に置いてある内の一つが、行動制御の薬品とすり替えられてたんだ。きっと、誰かがまた僕を陥れようとしたんだね」

「えっ………怖いわね。酷い事する人がいるのね…昨日の薬草泥棒の犯人と同じ人かしら」

「うん。飲んでたら大変な事になってたよ。まぁ、今回も僕にすぐ気付かれてる時点で、敵では無いけどね」

「…分かったけど、その話を私にしてどうするの?私、犯人じゃないわよ?」

「分かってるよ。そうじゃなくて……僕は思ったんだよ。これは、犯人からのプレゼントだって」

オリビアは、だんだんと嫌な予感がしてきた。綺麗なはずの瓶の中身が毒々しく見えてくる。

「………それで?」

「気付かずに飲んでたら、確かに危険だよ。でも、気付いていれば何も問題無い。量を調節して、上手い具合に使えば、より強力な効果を発揮する。そうだな、例えば…好きな人に飲ませて部屋に連れ込むとか、そういう感じに使えたりね」

ハヤトがにっこりと笑った。


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