ひと晩の交わりで初恋の人の子どもを身ごもったら、実は運命の番で超溺愛されてしまいました~オメガバース~
 「デリかがみ」の敷地はとにかく狭い。
 四畳半ほどの店内に、裏は三畳ほどのキッチンだ。

 全国規模で展開しているが、一市町村に一軒。コンビニや歯医者と同じくらいの割合で存在している。ちょっとした隙間があれば、建てられるらしく、私が勤務する田舎町のこの「デリかがみ」もそうだったようだ。

 そのため仕事の合間に休憩するといっても、キッチンの端っこの丸椅子だ。
 当然、テレビもなければ、雑誌なども置いてない。
 休憩中はキッチンの片隅に座って、昼食をぱぱっと済ませて、午後の仕込みなどをしている。

 月に一度一週間ほど発情期があるせいで、給料も通常の社員よりも低く設定されている私は、当然家にテレビを買うほどの金銭的余裕がない。
 もちろんラジオもない。

 防災用にラジオくらいは必要だと思ってはいるが、それよりもまだ四歳である我が娘に医療費や保育費などあれこれお金がかかってしまうので、どうしても優先順位は後回しになってしまう。

 だから世間のことには、だいぶ疎い自覚はある。
 

 最近、かなりの型落ちである中古携帯電話を買った。
 
 娘を保育園に預けるようになり、連絡先などが必要でようやく購入したものだ。
 しかし、古すぎて電話とメール機能しか使えないものであった。
 検索やニュースなどのネットサービスは、すでに数年前に終了していたほど古い携帯電話だ。

 でもそれでいいと思っている。

下手に情報を耳に入れてしまったら、毎日私は動揺して過ごしてしまうだろう。
子どもの父親のことで。
 
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