教会を追放された元聖女の私、果実飴を作っていたのに、なぜかイケメン騎士様が溺愛してきます!
 騎士はソファーから立ち上がると、エレノアの側まで駆け寄り、ぎゅう、と手を握りしめた。

「?!」
「エレノア殿、驚いただろうが、どうか話を聞いて欲しい」

 懇願するように手を握りしめ、エレノアを見つめる騎士。

(ち、近い……、近いです!!)

 イケメン騎士に寄られて顔を真っ赤にするも、騎士は離れてくれない。エレノアよりも高い背を屈ませて、顔を近付けている。

(お店に来ていた時もだけど、この人、距離感おかしくない?!)

「それでは話が出来ませんよ、兄上」
「あ、す、すまない……」

 兄上。

 どうやらソファーに座っている男は、騎士の弟らしい。どうりで似ているし、イケメンだ。

 弟の声がけで、ようやく騎士が離れてくれたので、エレノアはホッとする。まだ顔が熱い。

(しかしこの騎士様、公爵家の方だったのか。なら、尚更何で街の果実飴なんかを?)

 エレノアはつい疑いの目で騎士を見れば、彼はエレノアに無邪気な笑みを向け、ソファーまで手を引いてくれた。

(うっ、可愛い……)
 
 不意に見せられたその笑顔に、エレノアは胸がキュンとしてしまう。イケメンなのにその笑顔はズル過ぎる。

 騎士に促されるまま、エレノアがソファーに腰を下ろすと、彼もすぐ隣に座った。

「さて、君を呼び出した理由だが……」

 ソファーに座ったエレノアたちを見届けると、弟が口を開いた。

 エレノアは膝の上で両手をギュッと握りしめて、続きを待った。

 教会には二度と戻りません!!

 そう言う準備は出来ている。もし、女将を人質に取られるようなら、観念するしかない。

 エレノアは緊張が走るこの部屋の空気に、グッ、と決意を固めた。

「君には兄上と結婚してもらいたい」
「はあ?!」

 エレノアにとっては一大事な決意をしたのに、弟から言われた言葉は予想もしないことだった。
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