教会を追放された元聖女の私、果実飴を作っていたのに、なぜかイケメン騎士様が溺愛してきます!
 店の前に屋台のようにせり出たこの果実飴屋のすぐ隣には、座って食べていけるように、ベンチやテーブルセットが置いてある。

 持ち帰る人もいれば、食べていく人もいて、様々。

 エレノアは再び、行列を捌き始めた。

 気になって、イートスペースに向かった騎士をちらりと見れば、彼は大人しくベンチに座っていちご飴を食べていた。

(イケメン騎士様といちご飴………。何ともミスマッチね)

 騎士はバツが悪そうに飴をかじると、曇った表情を輝かせた。

(そうでしょう、そうでしょう、美味しいでしょう)

 騎士のわかりやすい表情から、エレノアは心の中でドヤ顔をする。

 この果実飴は、果実の甘さを活かすために、飴に拘り、極限まで薄くしてある。

 パリッ、じゅわっ、がこの果実飴の売りだ。

 この美味しさに、今や王都中が夢中だった。

(真面目そうな逞しい体躯の騎士様が、いちご飴……)

 その騎士の可愛らしさに、エレノアは仕事中にも関わらず、笑い出してしまいそうだった。

 一人、ベンチで果実飴を食べていた騎士は、気付けばご令嬢たちに囲まれていた。

(まあ、イケメンだったもんね)

 そうこうするうちに、忙しさに忙殺されたエレノアは、騎士の方を見なくなった。

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