教会を追放された元聖女の私、果実飴を作っていたのに、なぜかイケメン騎士様が溺愛してきます!
「お疲れ様でした」

 まだ日も明るい夕方前に、エマの捌きによって果実飴が完売した。数はいつも通り用意したのに、彼女は有能すぎる。

「では、カーメレン公爵家に帰りましょうか」

 片付けを終えたエレノアは、エマの呼びかけで帰宅の準備をする。

「通いで来るとはいえ、エレノアがここから出ていくのは寂しいねえ」

 女将に挨拶をすると、心からそう言ってくれて、エレノアもじんわりしてしまった。

 それから、馬車では目立ってしまうのため、イザークとエマに挟まれ、エレノアは徒歩で帰宅した。

 相変わらず大きいカーメレン公爵家のお屋敷の横には、よく見れば別邸がドドンと建っている。本邸よりは小さいものの、充分に大きい。

「あれが私たちの住まいだ」
「え?! 離れって言ってませんでした?!」
「あれが離れだ」
「まじですか……」

 まさか、別邸だと思った立派なお屋敷が離れだとは思わなかったエレノアは、イザークの説明に口をあんぐりとさせた。

 なお、離れの入口にも、カーメレン公爵家の私兵が立っており、セキュリティは万全。

「お帰りなさいませ」

 離れに入ると、昨日出会った上品な執事が出迎えた。

「ジョージ、どうして」

 驚くイザークに、ジョージはにこりと笑って答えた。

「私もこちらでお世話させていただくことになりました。よろしくお願いいたします」

 白髪混じりの黒い頭を下げ、ジョージはイザークとエレノアににこやかに微笑んだ。

「……も?」

 ふと疑問に思ったエレノアが、エマに首を傾げれば、彼女は口元をほころばせて言った。

「私の父です」 
「ええ?!」

 エマは片手を上げてエレノアにジョージを紹介してみせた。エレノアは驚いて声をあげたが、イザークは複雑そうな顔でジョージを見下ろしていた。

(ザーク様はもちろんご存知だろうから、驚いている理由は私と違うわよね?)

 
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