教会を追放された元聖女の私、果実飴を作っていたのに、なぜかイケメン騎士様が溺愛してきます!
 間が空いてしまい、エレノアが二人の表情を交互に見比べていると、イザークが頭に手をやり言葉を出す。

「オーガストの指示か?」
「はい。オーガスト様は兄君であるイザーク様が離れとはいえ、戻って来られて嬉しいのですよ」
「……よろしく頼む」
「離れの使用人は極力少なくしつつ、警備はしっかりしておりますのでご安心ください」
「……ありがとう」

 複雑そうなイザークの表情を読み取り、求められる答えを弾き出すジョージに、イザークは敵わない、といった表情でお礼を述べた。

 イザークの何とも言えない空気に、エレノアも何だか居心地の悪さを覚えた。二人のやり取りを所在無さげに聞いていると、ジョージがすぐにこちらに気付いた。

「奥様、こんな玄関先で申し訳ございません、さあエマがお部屋までご案内します」
「おく、さま」

 聞き慣れない単語に、自分を指した言葉だと理解するのに、エレノアは一呼吸置いた。

 隣のイザークは何故か顔を手で覆っている。

 どうしたんだろう、と思いつつも、エレノアはジョージにきっぱりと告げる。

「あの、その奥様というのはやめていただけますか? エレノアとお呼びください」
「……かしこまりました、エレノア様」

 エレノアのお願いに、ジョージは直ぐ様頷いて訂正をしてくれた。

(良かった。良い人そうだし、少しの間とはいえ上手くやっていけそう)

 「様」付にまだ慣れないものの、「奥様」よりはマシだと思案していたエレノアがふと横をみると、何故か悲しそうな顔をしたイザークがいた。

 イザークの先程からの不可解な行動に、エレノアが首を傾げていると、エマの手がそっと背中を家の中へと促した。

「エレノア様は気になさらなくて大丈夫ですよ」
「そうですか……」

 そのまま部屋へと連れて行かれたエレノアがイザークを振り返ると、彼は俯いたままだった。


 
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