教会を追放された元聖女の私、果実飴を作っていたのに、なぜかイケメン騎士様が溺愛してきます!

10.長男の立ち位置(ジョージ視点)

『あの、その奥様というのはやめていただけますか? エレノアとお呼びください』

 ジョージがエレノアを『奥様』と呼んだことにより、夫婦となった実感を噛み締めていたイザークは、彼女の言葉を聞いて落胆した。

「やはり、好きでもない男と結婚したくなかったのだろうか」

 部屋に向かったエレノアを視界の端に捉えながらも、イザークは俯いて呟いた。

 ジョージの「奥様」発言に、先程は耳まで赤くして喜んでいたというのに。

「イザーク様のそんな表情を見られるなんて、エマの報告通りでしたね」

 俯く傍らで、クツクツと笑うジョージに、イザークは顔を赤くして睨みつけた。

 ジョージはカーメレン公爵家に父親の代から仕える執事頭で、カーメレン兄弟を幼い頃からよく知る存在だった。

 そのため、執事といえど、兄弟はこのジョージを父親同様に思っていると同時に、恥ずかしい所も知られる存在で、頭が上がらない所がある。

「……悪いか」

 いつの間にエマはジョージに報告をしたのか。「有能すぎるのも困りものだ」とイザークは溢した。

「いいえ、あなたのそんな人間らしい表情が見られて私は嬉しいです」

 ジョージは先程までからかうようなクツクツとした笑いを、親のような優しい笑みに変えてイザークを見つめた。

「あなたがやっと安らぐ場所を見つけられたのならこんなに嬉しいことはありません」
「しかし彼女は、離婚を前提にしている」
「囲ってしまえばこちらのもの。私達もご協力しますよ?」

 オーガストとは言い回しが違うものの、ジョージの物騒な言葉にイザークは苦笑した。

「いや、彼女には自由に生きて欲しい。もちろん、私が幸せにするつもりはある」
「幸せにして離さない、くらい言えばよろしいのに。まったく、あなたは……変わりませんね」

 イザークの言葉にジョージは眉を下げて微笑んだ。

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