教会を追放された元聖女の私、果実飴を作っていたのに、なぜかイケメン騎士様が溺愛してきます!

12.旦那様の思いやり

「あの、エマ? 仮の妻にこんなにドレスはいらないと思うのだけど?」

 ざっと見るに数十着はあるドレスに、エレノアは目眩を覚えた。

 教会にいた頃は、聖女用の白い布とも言えるボロボロの服を来ていた。果実屋では女将のお下がりのワンピースを自分用のサイズに直して着ていた。今もそれである。

(こんなに綺麗なドレス、上位の聖女が着ていたのしか見たことがない……)

 エレノアは、その綺羅びやかさに、目を何度も瞬いた。

「エレノア様は一応、公爵家に嫁いで来られた方。しかも騎士団長の妻ですもの。装いはそれなりになさらないと!」
「はあ……」

(あ、全然ラッキーじゃなかった。仮とはいえ、お貴族様の妻になるって大変なんだな)

 エマの言葉にエレノアは思わず無になった。

「でも、私なんかが着ても似合わないよ……エマの方が似合うんじゃないかな?」

 美人なエマと自分を見比べてエレノアは落胆する。

(それに、こんな汚いのに……)

 エレノアは自分のボロボロの手を見つめた。

< 33 / 126 >

この作品をシェア

pagetop