教会を追放された元聖女の私、果実飴を作っていたのに、なぜかイケメン騎士様が溺愛してきます!

15.シスター

「シスターに教わりました」
「シスターに?」

 エレノアが真っ直ぐにオーガストを見つめて言うと、彼は驚いていたようだった。

 エレノアの情報を突き止めたものの、教会に来る以前のことは調べられていないらしい。

 その事実にエレノアは少し安堵しつつ、説明を続けた。

「私を育ててくれたシスターは、伯爵家のご令嬢でした」
「ほう……」

 エレノアの言葉にオーガストは興味を抱いたようだったが、エレノアは事実を少しだけ隠して説明した。

「詳しくは私も知りません。だけどシスターは、私がいつか教会に上がることを見越して、馬鹿にされないように一通りの簡単なマナーを教えてくれました」
「……だからあんなに綺麗なお辞儀をなさるんですね」

 初めて会った日のことを思い返し、ジョージが感嘆を漏らす。

「そうですか、納得がいきました」

 説明を終えたエレノアに、オーガストがにっこりと微笑んだ。

(シスターのこともこれから調べられるんだろうか? ううん、教会糾弾には関係ないもの。大丈夫なはず)

 エレノアがぎゅう、と胸の前で拳を握ると、横にいたイザークはエレノアを見て微笑んだ。

「素敵な方なんだな……」

 その言葉に、エレノアの目頭が熱くなる。

(本当にこの人は……)

 エレノアが嬉しくなる言葉をくれるイザークに、エレノアは涙を堪えるのに必死だった。

「はい、とても」

 エレノアが必死に繕った笑顔に、イザークもまた、優しく微笑むのだった。

(シスター……、私の育ての親であり、大切な人)

「その方にもご挨拶したいな」

 イザークがエレノアに優しい笑みで言うので、エレノアは繕った笑顔が下がる。

「……シスターは、昨年亡くなりました」

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