教会を追放された元聖女の私、果実飴を作っていたのに、なぜかイケメン騎士様が溺愛してきます!

17.ミモザの花言葉

「それ、キスされようとしてません?」
「ええええええ?!」

 次の日、エレノアは果実店にやって来て、もも飴を試作していた。女将は配達でいないので店番も兼任していた。

 女将が仕入れてくれた桃は、甘さが強く瑞々しい。飴をかじった瞬間、果実の甘さに感動するだろう。

(ふふ、ザーク様、喜んでくれるかな?)

 イザークが顔を輝かせて飴を食べる姿を想像してニヤニヤしていたエレノアは、エマに突っ込まれて、根掘り葉掘り昨日のことまで喋らされてしまったのだ。

「いや、キスって、飛躍しすぎだと思うけど……ザーク様の距離感、バグってるし」
「いいえ! そんな雰囲気だったのでしょう?」

 キス、と言われて恥ずかしくなったエレノアは、顔をパタパタと扇ぎながら否定する。しかしエマは興奮した様子で、どうしてもキスだということにしたいらしい。

「私を慰めようとしてくれてただけだし……それに、その、キスした訳じゃないし……」
「ちっ、チキンめ」
「あの、エマさん?」

 しどろもどろに説明をすれば、エマはその美人な風貌とは真逆の乱暴な言葉遣いをする。エレノアはそんなギャップに慣れつつもあった。

「いいですか、エレノア様! 今度そんなことがあったら、しばらくは目を開けてはいけませんよ?」
「は、はあ……」

 力一杯力説するエマに、エレノアは思わず頷いてしまった。

「でもさあ、妻って言っても見せかけなんだからさ、キスはしないでしょ? そういうのは好きな人としないと」
< 47 / 126 >

この作品をシェア

pagetop