教会を追放された元聖女の私、果実飴を作っていたのに、なぜかイケメン騎士様が溺愛してきます!

28.古い慣習

「伯爵、令息……? でも騎士団の貴族主義は無くなったんだよね?」
「厳密に言えば、完全には無くなっておりません。根が深いですから、ああいう考えの者もいます。完全に無視は出来ませんので、ああやって隊を分けることで、虐げられる隊員が出ないように配慮はされているのですが……」
「でも、あんな人が隊長なんて……」

 エマの説明に、エレノアも顔が歪む。

「下賤な奴がどうやって団長に取り入ったのか!」

 小馬鹿にしたようなグランの態度だが、サミュはへらりと笑って躱していた。

「カーメレン団長は、冷徹で強いお方。そんな団長の一番側にお前みたいな奴が控えてるなんて!」

 サミュを馬鹿にしながらも、半分はやっかみだ。
サミュもそれをわかっているから、何ともない顔をしているのだろう。しかし、他の第一隊の騎士たちは、顔を歪ませつつも、サミュが笑って言い返さないので我慢していた。

 サミュは第一隊のみんなに慕われているのがよくわかるから、みんな、悔しいのだろう。それはエレノアも同じだった。

(ザーク様の想いを踏みにじるような言動、許せない!)

「……団長が冷徹? あの方の根っこは温かくて情があるよ」

 グランの的はずれなイザークに対する憧憬に、サミュが思わず溢す。すると、グランは頭に血を上らせて叫んだ。

「お前があの方を語るな! お前なんかより、俺のほうがよっぽど……! 汚らしい孤児が!」
「いい加減にしてください!」

 ドン、とサミュがグランに突きとばされたと同時に、エレノアは思わず訓練場に走り出ていた。
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