教会を追放された元聖女の私、果実飴を作っていたのに、なぜかイケメン騎士様が溺愛してきます!
「面会出来ないとはどういうことです?!」

 騎士団の病棟のある塔の入口に到着するなり、オーガストが入口の騎士と揉めた。

「ですから、カーメレン団長は今、治療中ですので、ご家族でもお入れするわけにはいきません」
「報せから時間が経っているが、そんなに悪いのか?」

 騎士の言葉に、オーガストが問う。

 教会から聖女が派遣され、団長であるイザークは直ぐにでも治療が施されているはずだった。なのに、未だ治療中という騎士の言葉に、オーガストが怪訝な顔をするのは当然だ。

「心配いりませんよ、次期カーメレン公爵様」

 問い詰められていた騎士があたふたしていると、騎士の後ろからグランが出てきた。どうやらこの塔周辺の護衛をしているのは彼の第二隊のようだ。

「心配無いとはどういうことですか?」
「団長には大聖女のエミリア様が治療にあたっておられるからです」
「……大聖女がついているなら、とうに治療が終わっているのでは?」

 口の端を上げて笑いながら出てきたグランに、オーガストがギラリと問う。

「……大聖女様に失礼ですよ。それだけ難しい治療だということです。何せ、今回は毒を持つ魔物でしたので」
「毒……?」
「はい。それを取り除くのに時間を要するのです。でも安心してください。団長はエミリア様の愛でお救いいただけますので」

(あのエミリア様が……)

 イザークの治療をしているのがエミリアだと聞き、エレノアの心臓が早鐘のように煩い。

「騎士団が毒にやられたにしては、貴方の第二隊は無事のようですが?」

 オーガストの言葉に、確かに、とエレノアは辺りを見渡す。彼の隊らしき第二隊がこの塔を囲んでいる。護衛にしては過度すぎるくらいに。まるで誰も病棟に入れまいとするかのように。

「うちの隊が有能だということですよ」

 グランはニヤリと笑ってそう言うと、再び塔の中へと入っていった。

「待って!! ザーク様の様子だけでも聞かせて!!」

 エレノアはグランの背に向けて叫んだが、彼は振り返ることなく、塔の中へと入って行った。

「エレノア様!!」

 グランが消えて行った塔の入口を見つめていると、サミュが走り込んで来た。
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