王子様を落とし穴に落としたら婚約者になりました ~迷惑がられているみたいですが、私あきらめませんから!~
(わたしが何もせず、でも相手にとって望んだ結果が得られなかったら、そのうち行動がエスカレートすると思ったし……)

 焦れば絶対にぼろを出す。エイミーはそう踏んでいたのである。

 ライオネルはエイミーのもう一つのたくらみに気づいたのかいないのか、やれやれと肩をすくめると、エイミーから調査資料を受け取って中を確認しながら言った。

「とにかく、この件はこのままにはしておけない。早急に手を打つ必要がある」

「手を打つにしても、犯人が複数人いた場合、一人を捕まえたら他の人に逃げられちゃいますよ?」

「……なるほどお前は、だから犯人を泳がせていたわけか」

「あ……」

 しまった、余計なことを言い過ぎたと、エイミーは自分の口を押えたがもう遅い。

 ライオネルはエイミーの両方のほっぺたをつまむと、むにーっと左右に引っ張った。

「ひひゃい!」

「このバカ! 何故相談しない! 一人で突っ走りすぎだ‼」

「ごめんにゃひゃい……」

 ライオネルはエイミーの頬から手を放して、紙を丸めてポンポンと肩を叩きながら天井を仰いだ。

「まあいい、個人か複数かは知らんが、だったらこっちも罠を張っておけばいいだけの話だ」

 エイミーはライオネルに引っ張られた頬を撫でながら、きょとんと首を横に振った。

「どうするつもりですか?」

 ライオネルはニッと笑うと、内緒話をするように声を落とし、エイミーの耳元に何事かを囁いた。



< 197 / 233 >

この作品をシェア

pagetop