コーヒーにはお砂糖をひとつ、紅茶にはミルク —別れた夫とお仕事です—
「藤村さんてさぁ」
「は、はい?」

「休みの日って何してるの?」
「え!?えっと…買い物とか映画とか展覧会とか…えっと…」

(この反応はどう考えても…)

「じゃあさ、今度良かったらこの展覧会行かない?深端がスポンサーだから、招待券があるんだよね。」
壁のポスターを指さした。

「え…」
蒼士の予想に反して水惟の眉間にシワが寄った。

「あー…そ、それ、もう行っちゃいました…すみません。」

水惟がそう言ったタイミングでエレベーターがクリエイティブチームのフロアに着いたので、お辞儀をして降りて行った。

(…え?)
蒼士はぽかんとして、しばらくポスターを指さしたまま固まっていた。


別の日
この日、水惟は蒼士が営業を担当している案件で洸のアシスタントとして社内ミーティングに参加していた。
ミーティング終了後、蒼士は水惟に声をかけた。

「このイラストって藤村さん?」
イラストが得意な水惟は、化粧品のポスターのイラストを任されていた。

水惟は蒼士に話しかけられたことに驚いたのか、無言で頷いた。

(うーん…やっぱり…)
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