コーヒーにはお砂糖をひとつ、紅茶にはミルク —別れた夫とお仕事です—
——— 水惟、かわいい
——— 大好きだよ、水惟


——— 結婚なんてしない方が良かった


——— 水惟のことはもう好きじゃない


(………)

(あんな別れ方して、どうしてあんな風に普通にできるの?)
水惟の(むね)はどうしようもなく騒ついてしまっている。

「ごめんな、蒼士が担当だって言わなくて。」
帰り道、洸が言った。

水惟は首を横に振った。
「同じ業界で、しかもこんなに距離の近い会社で働いてたら…仕事で関わるのなんて必然みたいなものだから。その時期が来たってだけです。ちゃんとやれます。」

——— 少しふっくらした?

「……洸さん、私って太ってます?」
「え?どうした急に。どっちかって言ったら痩せてるよ。」

4年振りに会った蒼士は高級そうなスーツを違和感なく着こなし、表情も自信に満ち溢れていた。

(………)

あれからそれなりの時間が経ったんだ、と水惟は実感した。
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