コーヒーにはお砂糖をひとつ、紅茶にはミルク —別れた夫とお仕事です—
***

「なんか、そんな予感はしてました。」
いつものバーで、蒼士は洸から独立の話を聞いていた。

「寂しくはなりますけど…遅かれ早かれってやつですよね。回せる仕事は回すんで、深端のこともこれからもよろしくお願いします。」

「助かるよ。古巣と揉めるつもりはないからさ、独立しても深端に恩返ししたいと思ってる。」
洸は珍しく緊張していたのかホッと安堵した表情を見せた。

「ちなみに…水惟、連れてっちゃダメ?」
「え…」

蒼士の反応に洸は「わはは」と笑った。

「冗談だよ。そんな蒼白した顔するなよ。付き合ってること隠してるんだろ?そんな顔したらすぐバレるぞ。」
「洸さん知ってたんだ。」

「気づくよそりゃあ。水惟はどんどん垢抜けていってるし、蒼士はなんか雰囲気柔らかくなってるし。」
「………」

「たださ、水惟だってこれから先ずっと深端にいるとは限らないだろうから、深端を辞めるって時は蒼士に許可無く声かけさせてもらうよ。」

「どうかな。水惟は深端でやりたいことがあるみたいだし。」

水惟の深端でやりたいことは、未だにはっきりとは聞けていない。
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