コーヒーにはお砂糖をひとつ、紅茶にはミルク —別れた夫とお仕事です—
「パフェの前に寄り道してもいい?」
約束していた久々のデートの途中、蒼士が言った。

「え、ここ?」
蒼士に連れてこられた店の前で水惟が聞いた。
「うん。入ろう。」

そこは高級アパレルのセレクトショップだった。

「何か買うの?」
水惟の質問は“蒼士の服を”という意味だった。

「うん。」
蒼士はいたずらっぽく口角を上げて言った。

「ふーん…?」
水惟はよくわからないまま、蒼士に手を取られ店に入った。

「え?」

蒼士が水惟の身体にブルーのワンピースを当てた。

「んー…ちょっと違うかな。」

「え、待って、蒼士の服買うんじゃないの?」
「水惟の服買いに来たんだよ。」
蒼士は当然のことのように答えた。

「でも、パーティーの服はもう十分持ってるよ。」
「じゃああと一着だけ。」

「でも…」
「今持ってるのは全部水惟が選んだドレスだろ?一着くらいは俺が選びたい。」
蒼士は楽しそうにラックのドレスを選びながら言った。

気になったものを次々と水惟に当てていく。
「あ、これ。」

蒼士が目を止めたのは、ミルクティーブラウンのワンピースだった。
派手さは無いがシルク素材で艶があり、クラシカルで上品な華やかさがある。

蒼士に促され、試着することになった。
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