コーヒーにはお砂糖をひとつ、紅茶にはミルク —別れた夫とお仕事です—
それからも蒼士は忙しい時期が続いていた。
水惟の方も、新しいプロジェクトや大詰めのプロジェクトが重なり、残業が増えていた。

「水惟」
蒼士は帰宅すると、リビングで床に座ってテーブルに臥して寝てしまっている水惟の肩を叩いた。

「ん…おかえり…」
ボーッとした寝ぼけ眼で蒼士を迎える水惟に、蒼士は困ったように笑う。

「ただいま。こんなところで寝てたら風邪ひくよ。」
「ん〜…待ってたら寝ちゃったみたい…LIMEくれてたんだ、気づかなかった…ご飯あるよ…」
「ほんと?何も食べてないから助かる。」
「よかった。すぐ用意するね。」
「手伝うよ。」

「水惟も食べてなかったんだ。先に食べてても良かったのに。」
「一緒に食べれるときは一緒に食べたいから。」
ハンバーグを食べながら水惟が言った。

「でも水惟も今忙しいんじゃない?KIRANとかシャルドンとか、大きい案件が重なってるって聞いてるけど。」
「うん、結構バタバタしてる。でもKIRANはメーちゃんも一緒だから楽しいよ。メーちゃん、今回はアシスタントじゃなくて正カメラマンだからちょっと緊張してるんだって。でも私から見たら超すごくて—」
水惟は楽しそうに仕事の話をした。

「水惟、仕事楽しい?」

蒼士の質問に一瞬、乾の顔が浮かぶ。
乾からは相変わらずダメ出しばかりされている。

「…うん。知らないことばっかりで、毎日刺激が多くて楽しい。」

ダメ出しは自分が未熟だからだ、成長すれば変わっていく、水惟はそう思って笑顔で気持ちを飲み込んだ。
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