コーヒーにはお砂糖をひとつ、紅茶にはミルク —別れた夫とお仕事です—
「5年以内に…最低でも営業のトップにはなれるようにする。もちろん深山の名前だけじゃなくて、数字で成果を認められるような形で。」
「………」

「深端を少しずつでも水惟が働きやすい会社に変えられるようにして、水惟を迎えにいくから。そしたら、改めて夫婦としてやり直そう。」
水惟には蒼士の言っている話がどれくらい現実味があるのかわからなかった。

「だから水惟は5年間、俺や深端と距離を置いて…前みたいに笑えるようになって欲しい。」
水惟の目からはさらに涙が溢れ出てくる。

「そんなの…どうなるかわからない…5年で、蒼士に好きな人ができちゃうかもしれない…」
「絶対無いって約束する。」

「わ、わたし…だって…わからないよ…」
「…それは…すごく嫌だけど、水惟の気持ちを優先する。」

「…でもやっぱり5年間離れ離れなんて—」
蒼士はソファに座ったままで水惟を抱きしめた。

「俺はずっと水惟を想ってるから。信用してほしい。」
「………」
水惟は何も言わずに背中に回した手に力を込めた。


その日は水惟が蒼士と同じベッドで寝るのを拒否してソファで寝ようとしたので、蒼士が代わりにソファで寝た。
水惟はベッドの中でもずっと泣き続けていた。

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