コーヒーにはお砂糖をひとつ、紅茶にはミルク —別れた夫とお仕事です—
***
蒼士が水惟に離婚の話を切り出す数日前。
蒼士は洸をいつものバーに呼び出していた。
「はぁ!?離婚!?」
洸は珍しく大きなリアクションで驚いてみせた。
「待った待った、なんでいきなり離婚なんて話になるんだよ。」
蒼士は洸の疑問も無理はないと思った。
「水惟が今休職中なのは知ってますよね?」
「ああ、うん。」
「…水惟、デザインができなくなってて。なのに毎日家でパソコンに向かってて…」
「それは仕方ないんじゃないか?」
「それだけじゃなくて、家事も完璧にこなそうとしてるんですよ…俺と深端にプレッシャーを感じてるって感じで…見てて辛いんです。」
「………」
「このまま俺と暮らして深端に戻れる日が来ても…多分また同じことになるだろうなって感じで、そもそも復職できるようになるかどうか…だから…一旦離れた方が良いと思うんです。」
「一旦…か。」
洸のウィスキーグラスが揺れ、氷がカランと鳴った。
「だから—」
「じゃあ、水惟に声かけてもいいよな?リバースに来てくれって。」
「さすが、俺の考えなんてお見通しですよね。」
蒼士は苦笑いで言った。
「ばーか。前にも言っただろ?水惟はリバースに欲しいって。チャンスが回ってきてラッキーだよ。」
「でも今の水惟は…」
「うん。それも含めて、リバースで預かりたい。あんなにいいデザイナーがこのまま潰れるのはもったいないよ。」
「うん…」
「うちには蛍もいるし、今のメンバーはみんな大人で余計な詮索とかしないからさ、水惟には良い空間だと思うよ。」
洸は蒼士を励ますような笑顔で言った。
「水惟の分の給料は俺に持たせて下さい。」
蒼士が言った。デザインができない状態の水惟を雇ってもらうことへのせめてもの代償のつもりだった。
「いらねーよ。KOH UBUKAWAをみくびるなよ。」
洸は冗談めかした笑顔で言った。
「水惟一人分の給料くらい余裕だし、水惟がまたデザインできるようになったらしっかり稼いでもらうよ。」
蒼士が水惟に離婚の話を切り出す数日前。
蒼士は洸をいつものバーに呼び出していた。
「はぁ!?離婚!?」
洸は珍しく大きなリアクションで驚いてみせた。
「待った待った、なんでいきなり離婚なんて話になるんだよ。」
蒼士は洸の疑問も無理はないと思った。
「水惟が今休職中なのは知ってますよね?」
「ああ、うん。」
「…水惟、デザインができなくなってて。なのに毎日家でパソコンに向かってて…」
「それは仕方ないんじゃないか?」
「それだけじゃなくて、家事も完璧にこなそうとしてるんですよ…俺と深端にプレッシャーを感じてるって感じで…見てて辛いんです。」
「………」
「このまま俺と暮らして深端に戻れる日が来ても…多分また同じことになるだろうなって感じで、そもそも復職できるようになるかどうか…だから…一旦離れた方が良いと思うんです。」
「一旦…か。」
洸のウィスキーグラスが揺れ、氷がカランと鳴った。
「だから—」
「じゃあ、水惟に声かけてもいいよな?リバースに来てくれって。」
「さすが、俺の考えなんてお見通しですよね。」
蒼士は苦笑いで言った。
「ばーか。前にも言っただろ?水惟はリバースに欲しいって。チャンスが回ってきてラッキーだよ。」
「でも今の水惟は…」
「うん。それも含めて、リバースで預かりたい。あんなにいいデザイナーがこのまま潰れるのはもったいないよ。」
「うん…」
「うちには蛍もいるし、今のメンバーはみんな大人で余計な詮索とかしないからさ、水惟には良い空間だと思うよ。」
洸は蒼士を励ますような笑顔で言った。
「水惟の分の給料は俺に持たせて下さい。」
蒼士が言った。デザインができない状態の水惟を雇ってもらうことへのせめてもの代償のつもりだった。
「いらねーよ。KOH UBUKAWAをみくびるなよ。」
洸は冗談めかした笑顔で言った。
「水惟一人分の給料くらい余裕だし、水惟がまたデザインできるようになったらしっかり稼いでもらうよ。」