コーヒーにはお砂糖をひとつ、紅茶にはミルク —別れた夫とお仕事です—
動き出した時計の針

元夫

カフェ&ギャラリーjärvi事務所

「では、B案の都会の中の緑にフォーカスした案で進行させていただきますね。」
蒼士が言った。
2週間前にプレゼンした3つの案の中から、今回のプロジェクトで使用するものが決定した。

「やっぱりうちの売りは木々の緑なので、そこを推してもらえると嬉しいです。そこに水惟さんのイラストを組み合わせてもらったら、ターゲットにマッチしそうです!」
湖上が言った。

選ばれた案は、カフェやギャラリーの写真に鬱蒼と生い茂る緑を写り込ませ、そこにイラストで少女や動物を組み合わせるというものだった。

「私も、カフェもギャラリーもアピールできるこの案が一番良いと思ってました。」
水惟が笑顔で言った。

「もともとそういうコンセプトの施設だというのは知ってたんですけど…先日カフェで実際に席に着かせていただいて、本当に緑に癒される空間だって実感しました。」
「でしょでしょ〜!一時休店前に是非またいらしてください!」
湖上も嬉しそうだ。

“顧客理解が大事”という蒼士の言葉を実感することになり、水惟は少しだけ悔しいと思った。
(理解…昔一緒に仕事してた頃もよく言ってた…)

「撮影はリニューアルがある程度進んでからの方が良いと思いますが、まずはスケジュールを組んだ時点でカメラマンを連れて下見に来ますね。」
蒼士が言った。
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