コーヒーにはお砂糖をひとつ、紅茶にはミルク —別れた夫とお仕事です—

べつに

「今から試し撮りするけど、水惟のイラストって写真があったら参考になる?」
järviのカフェで一眼レフを手にした芽衣子が聞いた。

「んー今のところカフェで具体的に何かしてるイラストとかは予定してないんだけど、写真があったらそこからインスピレーションが湧くかも。」

水惟は根幹のコンセプトだけをしっかり決めて、デザインは進行しながらインスピレーション次第で柔軟に変えていくタイプのデザイナーだ。

「よし、じゃあ水惟、モデルやって。」

「え…」
水惟はあからさまに嫌そうな顔をした。

「も〜昔もやってたでしょー?」
「昔だって()だったよ…」

こういうテスト撮影のモデルは、デザイナーだろうがディレクターだろうが、その時にいる人間が協力する。

「水惟は本当に目立つの嫌いだね〜べつにどこにも発表しないんだから!はい、座って座って。ウダウダやってたらお店の迷惑になるでしょ。」
芽衣子に押し切られ、水惟は渋々カフェの隅の席に腰を下ろした。


「はい、水惟、目線こっち—」

「次、手元見る感じで—」

「ちょっと上向いてみようか、木を眺める感じで—」

「カップ 口に当てて—」

芽衣子は次々にカットを変えてシャッターを切っていく。
やりたがらないだけあって、水惟の笑顔はぎこちない。
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