コーヒーにはお砂糖をひとつ、紅茶にはミルク —別れた夫とお仕事です—
水惟をみつめたまま、蒼士の右手が水惟の左頬にそっと触れる。

水惟はくすぐったそうに、眉を下げて一瞬目を細くする。その表情に蒼士がクスッと微笑んで、愛おしそうに髪を撫でる。

(それから…)

水惟の顎を捕らえて、少しだけ顔を上に向かせて、触れるように唇を重ねる。

(そのあと…)

水惟の頬を手で包んで、唇を割り開くように舌を絡める。
水惟が恥ずかしがって顔を背けようとしても逃がそうとしない。

(女子の手と全然違う大きい手…溺れそうになる、呼吸を奪うようなキス…)

熱っぽい吐息が、絡み合うように混ざる。
キスの最中も時折目を開けて、お互いをみつめる。

蒼士の唇が水惟の首筋に落ちる。

服の裾から侵入した手が、肌に触れる。

(…それから…)

———パチンっ
水惟は目を覚ますように両手で頬を叩いた。

———は〜〜〜…

(何思い出してるの…)

(欲求不満なわけ?)


——— 水惟

不意に、蒼士が自分を呼ぶ声が耳の中に響く。

4年前なのか、現在(いま)なのか、どちらの声なのかわからない。

(もう別れたのに…なんで…)

(もっと名前を呼んで欲しいって思ってる…)


(どうして…)



(あの人と並んで歩いてるのに、手…つなげないんだろう…)
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