コーヒーにはお砂糖をひとつ、紅茶にはミルク —別れた夫とお仕事です—
「洸さん、私そろそろ…」
水惟は息苦しさを覚えて、パーティーからの退出を申し出た。

「ああ、そうだな。本当によく頑張ったな。おつかれ。」

水惟は会釈をすると、会場を後にした。


「水惟!」

会場を出た水惟が、絨毯が敷かれたようなホテルの階段を降りていると、後ろから蒼士の声で呼び止められた。
瞬間的に水惟の心臓が跳ねる。

「帰るの?」
「うん、もともと授賞式だけって洸さんには言ってあったから。」
水惟は見上げながら答えた。

「送るよ。」
「……え!?」

水惟は蒼士の言ったことが一瞬わからなかった。

「なんで…深山さんが…?」

「車で来てるし、酒飲んでないし…」

「そ、そんな、悪いです!大丈夫です、じゃ!」

蒼士と一緒に車に乗るところを見られでもしたら、また噂話のネタにされてしまうかもしれない。
水惟は焦って早く立ち去ろうと、足を踏み出した。

———グラ…

「水惟…っ」

「…()ったぁ…」

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