辺境騎士団のお料理係！～捨てられ幼女ですが、過保護な家族に拾われて美味しいごはんを作ります～

第六章 辺境伯夫人は女の子も欲しかったようで

今日は、屋敷中がそわそわしている。その理由がエルにはわからなくて、エルは首をかしげた。

「ハロにぃに、何かあった？」
「あー、エルは聞いてなかったか！」

　ハロンは妙におじさんぽい仕草で額をパチン、と叩いた。聞いていないって、なんの話だろう。

　昨日も夜遅くまで、今日は朝からメイド達――城下町から通ってくれる町の住民の奥様方だ――が、城中をピカピカに磨き上げている。

　厨房はエルが入るようになって以降は清潔第一にしているから、大掃除もさほど大変ではなかった。でも、城中の敷物は綺麗にはたかれ、洗濯されたし、棚の上の方まで丁寧に磨き上げられている。

　きっと、誰か重要なお客さんが来るのだろうと思っていた。

「今日、母上がお帰りになるんだ」
「はは、うえ……？」

　一瞬、その言葉が何を意味しているのかわからなくて、きょとんとしてしまった。口にしてから気づく。