love or die~死亡フラグ回避は恋愛ありえない幼なじみと×××せよ!~
ごめん
神社の空気は土の香りと木の香りをはらんでいる。
空には茜色の雲がたなびいていて、おおよその時刻が分かった。
腕には少しだけ汗が滲んでいて、その汗がたった今出てきたものなのか、死のその前からあったものなのかは、分かりようもない。
私は一度死んでいて、今この結埜神社に来ているのだ。
人のざわめきの声がさっきまで身近にあった。甲斐の声がしたような気もしたけれど、それは気のせいだったかもしれない。
でも、最後の瞬間には、痛みや苦しみはあまりなかった。
ただ、あ、負けた、と思ったのだ。腕力とか筋力とか、そういう物理的な力に圧倒的に負けた、と思った。
悲しいとも、悔しいとも思わない。ただ、同じようなことは、もう繰り返したくない、と思うだけだ。
私がぼんやりと境内の梛を見ていると、誰かが石段をのぼって来る気配があった。いつもよりもゆっくりと、甲斐がやって来る。
私を見つけて、視線を送って来てからは一度逸らして、こちらにやって来た。どんな死因だったのかは、想像出来る。
近くにやって来た甲斐は、いつものような冴えはない。
表情を変えずに、
「アイツら社会的に抹殺していいかな」と言った。
今、この3日前の過去においては、私と甲斐以外は知らない事件のことを言ってるのだと思う。
住所も名前も完璧に覚えといた、と続ける。でもまず私はいつものように、確認しておく。
「死因は」
「執拗な打撲による、出血性ショックって奴。それと」