愛する人と暮らす初めての日
 しばらくそうしていると、リーベが顔を上げ俺を見る。

 体の震えは治ったが、不安そうな顔をしていたので、安心させるように笑いかける。


「あの部屋での暮らしを話したらリュカの役に立てる?」


 まだ少し震える声で彼女が言う。

 “俺の役に立てる”。
 そんな理由で彼女には無理をしてほしくない。


「俺の役に立とうとか考えなくていいんだよ。それにリーベから話を聞きたいのは、あいつの刑罰を決める参考にしたいだけだから、嫌ならいいんだ」


 彼女の頭を撫でると、俺の胸に顔を寄せてくる。


「嫌なことを思い出させてごめん」


 彼女が苦しくならない程度に、更に強く抱きしめる。

 すると彼女が「んー」と声を上げながら、バタバタと体を動かす。
 不思議に思って腕の力を緩め、彼女の顔を見る。


「どうしたの、リーベ」

「リュカの顔を見ようとしたのに、リュカの力が強くてあげられなかった」

「なんかバタバタしてると思ったら、そういうことだったのか」


 理由が可愛すぎる。

 俺の顔を見たかったって。

 思わず笑みが溢れる。
 そんな俺を見て彼女も笑う。

 やはりリーベは笑顔の方がいい。


「そう言えば、お出かけの準備はいいの?」

「あ、そうだった。まだ時間に余裕あるけど準備しないとな。ほら、リーベおいで」


 ベッドから立ち上がり、彼女の手を取る。
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