俺様同期の溺愛が誰にも止められない
「オイお前ら、水野にあんまり飲ませるな」
え?

不意に背後から声がして、振り返ると影井が立っていた。

「どうしたんだよ」
盛り上がっていた同期達も、不思議そうな顔で影井を見ている。

「こいつ当直明けだから、気を付けないと倒れるぞ。大学の時みたいに救急搬送でもされたらマズイだろう」
「それは、そうだな」
ウンウント頷きながら、同期達は静かになっていった。

影井の言い方だと、私が普段から酔っぱらって倒れているみたいだけれど、急性アルコール中毒で倒れ緊急搬送されたのは過去に一度だけ。
倒れた後医学生の癖にと叱られてしばらく白い目で見られたけれど、それを3年経った今でも言われるのは納得できない。

「私は大丈夫だから」
「いいから、来い」
放っておいてと言おうとした私の手をつかみ、影井が集団とは逆の方向へと進んでいく。

「お願い離して」

影井の近くにいれば女子たちに睨まれるだけでいいことなんてないと、過去の経験から実証すみ。
だから必死に抵抗したのに、影井の歩みは止まることがない。

「ねえ」
「いいからついて来い」
苛立ちを含む声に、私は黙ってしまった。

拒否したい気持ちはあるものの、お酒と寝不足のせいで体がいうことを利かなない私はされるがままついて行くしかなかった。
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