俺様同期の溺愛が誰にも止められない
碧のスランプ
気が付けば季節は移って、もうすぐ7月。
夏がすぐそこにまで来ている。
学生時代はもうすぐ夏休みだねなんてウキウキしていたけれど、さすがに社会人になるとそうもいかない。
一応うちの病院ではみんなが交代で1週間程度の夏休みを取ることになっているが、医局で一番下っ端の私にどれだけの休みがとれるかはわからない。

「碧先生、夏休みはどこか行くの?」

凄いタイミングで声をかけてきたのは高杉先生。
私の態度ががわかりやすいのか高杉先生が鋭いのか、普段から超能力でもあるんじゃないかってくらい感がいい。

「できれば実家に帰りたいと思っているんですが、まだ予定は立てていません」
「そうなんだ、実家は山陰だったよね?」
「ええ、日本海の離島です」

そう言えばもう3年も実家には帰っていない。
もちろん実家に帰ったら帰ったで、色々と煩わしいのだけれど。

「高杉先生のご実家はどちらですか?」
「僕は関西、地元だよ。ただ、一人っ子で両親も亡くなっているから身寄りはいないけれどね」
「そうですか」

一緒に働くようになってまだ日の浅い高杉先生のことはあまりよく知らないけれど、身寄りがいないっていうのは少し寂しいな。
でも最近結婚したって言っていたし、そのうちのお子さんもできれば家族だって増えるはず。

ブブブ。
ちょうどその時救急からの内線が鳴り、今日救急担当の高杉先生が電話をとった。

「はい、高杉です。はい、はい」

どうやら救急外来からの呼び出しらしい。
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