俺様同期の溺愛が誰にも止められない
今やすっかりうちの科の人気者になった円先生は、おそらく素晴のご両親公認の仲ってことなのだろう。
生まれ育ちも性格もその頭脳も輝かしい経歴もすべてが優れていて、私としてはまったく敵う気もしない。
戦う前から勝負は見えている。

「碧先生本当に申し訳ありませんが、よろしくお願いします」

最後にはいつも私に頭を下げていく円先生の人好きのする笑顔の下に何か裏がありそうだと感じるのは、私の性格の悪さだろうか。
実際、私は最近の円先生を怖いとさえ感じるようになった。

「お嬢様は上手に人を使うね」

いきなり聞こえてきた声に私はギクリと振り返った。

「高杉先生、驚かさないでください」
正直あまり聞かれたくない話だったからびっくりした。

「あれだけ大きな猫をかぶっているのに、誰も気が付かないんだからみんな単純だよね」
「え?」

きっと円先生のことなのだろうけれど、何とも返事のしようがない。
一体高杉先生はどのあたりから話を聞いていたんだろうか?

「碧先生ももう少しずる賢くならないと、彼女に取られちゃうよ」
「そんな、私は別に・・・」

今誰より素晴の近くにいるものの、私達は将来を考えられるような関係ではない。
私たちの人生が重なる事はおそらくない。

「それならそれで、俺はかまわないけれどね」

別にどうでもいいけれどと話を終えてしまう高杉先生が、少し怒っているように見えたのは気のせいだろう。
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