俺様同期の溺愛が誰にも止められない
嫉妬心
はいはいと返事だけして円先生の言葉なんて無視すればいいのに、私は言われた通りに素晴の秋物をクローゼットから取り出した。
とは言え今はまだ8月に入ったところで、まだまだこれから暑くなる季節。
こんなタイミングで秋物を出されたら、誰だって引くと思う。
案の定、「何を考えているんだ」と素晴に叱られた。

「今日はずいぶん元気がないのね」
「うん、まあね」

いつものように食堂で一緒になった優紀と昼食をとりながらも、気分は晴れない。
いっそのことすべてをバラしてやろうかとも考えたけれど、素晴のことを心配しているお母様の気持ちを考えるとできなかった。

「碧早く食べないと、午後から合同カンファレンスでしょ?」
「ああ、そうだった」

週に一度科を超えて症例を検討する合同カンファレンス。
救命科の素晴も顔を出すから、会えるかもしれない。
ブツブツと文句を言いながらも素晴の会えることはうれしくて、私はランチを運ぶ手を速めた。
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