俺様同期の溺愛が誰にも止められない
碧の体調不良
着かず離れず。
そんな言葉を実感しながら、私達は8月を過ごしていた。
夏休みは当然のように子供や家庭のある人優先で、私達みたいな下っ端に休みの順番が回って切るのは夏も終わった9月頃。
それでも実家に帰れるのがうれしくて、私は浮かれていた。
普段から土日祝日関係のない仕事をしている素晴は、連休を何回かに分けて取る形で夏休みを消化するつもりでいるらしい。

「素晴は実家に帰らないの?」
「ああ、今のところ帰る予定はないな」
「どうして、ご両親もお待ちでしょ?」
「だから帰りたくないんだよ」

そう言えば、お父様は素晴が東京に戻ってくることを望んでいらっしゃるんだった。
お母様も素晴のことをとても心配していらっしゃるみたいだし、帰省すれば戻って来いって言われそうで帰りたくないのかもしれない。

「碧は楽しみなのか?」
「もちろん」

実家に帰れば色々と煩わしいこともありそうで気が重たいけれど、それでも母さんに会えるのはうれしい。
美味しいお魚も、綺麗な海も、私は楽しみにしている。

「そう言えば、最近残業が続いているだろう。今夜も当直のようだし、体は大丈夫なのか?」
「ええ」

精一杯の笑顔で返事をしたものの、私は素晴から視線を外した。
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